The trumpet of a prophecy ! O, Wind,

If Winter comes, can Spring be far behind ?”

-Percy Bysshe Shelley, 

ODE TO THE WEST WIND

 

 

 

 

 

医学教育な日々

管理人の書評です。教育関連で印象に残った書籍の書評を書いていますが、ほぼ趣味なので、深く突っ込まないでください。もし、興味を持ってその本を手に取っていただければ幸いです。


レナードの朝

オリバーサックス 著

 

映画化もされましたが、可能であれば、ぜひ、原作を読んでいただきたいです。本書との出逢いにより、R大学国際関係学部の学生であった私が、医師を志すこととなりました(親には迷惑を掛けました)。当時、哲学や文学にある種の言葉遊びのような虚しさを感じていたのですが、本書における患者さんと医師のやり取りは、非常に刺激的で、美しく、残酷で、”哲学”が生きていると思いました。この医療の世界の中で自分もいろいろなことを感じ、哲学や文学を見直してみたいと思い、再受験しました。

前半部分はL-Dopa(薬品)の開発の話なので難しく感じた方は、それを飛ばしていただいてもよいかもしれません。後半部分で、神経内科医である作者が、自身の経験を下敷きに患者さんにとっての”生きる”ということはなにか、困難にあっても、それでもなおと立ち向かう医師の姿勢、などが示されています。この姿勢に、A. カミュの「シーシュポスの神話」を思い出される向きもおられるかもしれません。

映画版もお勧めです。故ロビン・ウイリアムスとデニーロの演技が光ります。

 

YT 

July 12, 2018


教育の過程

JS ブルーナー著

鈴木祥三 / 佐藤三郎 訳

 

まだ全部を読み切っていなくて、かつ、すべてを理解できているとは思えないですが、現代教育改革のMilestoneの本です。今春に他界した父の書庫から見つけました。父の本かと思っていたのですが、どうも母のものの様ですが。

 

以下、本書を理解するために役立ちそうな教育改革史をメモ程度に書いておきます。

 

1920-1930代にかけて、教育改革の波が起こり、教育の社会への還元が叫ばれました。少し荒っぽい言い方をすれば、この時から現代教育改革が始まったと理解してもよいかもしれません。Chicagoではデューイが、学習者自身が生活の中で問題を見つけ解決する「問題解決学習」に取り組み、成果を挙げました。また、Massachusettsでは、モンテッソーリやデューイから着想を得て、パーカーストが、子供自身が作った「学習時間割」に基づいた個別指導法(ドルトンプラン)を確立しました。このドルトンプランは、大正期の自由主義にも大きな影響を与えたとのことです。

 

1940-1960になると、こうした改革の波はさらに進みました。スキナーは「学習とは行動の変容である」とし,ヒトの行動は過去の行動結果に依存すると考えました。もし過去の行動の結果が悪いものなら、その行動は繰り返されない確率が高く、良い結果であれば、何度も繰り返し行いえると主張し、これを「強化理論(Principles of Reinforcement)」と呼びました。

また、この強化理論を用いて学習を行い行動変容を行うことを、”オペラント条件づけ”と呼びました。スキナーのこうした教育理論/プログラムが、今日のプログラム学習の礎になっていることを忘れてはいけません。スキナーの一連の業績は、コンピューター支援学習(CAI)や、CBTといった個別学習方式の基礎となりました。

 

1960以降、著しい科学の進歩は、教育改革をさらに推し進めることを時代に要請しました。「どんな内容のものを、何を目的として教えたらよいのか」という議論は、今まで以上に一般的に全米を挙げて行われ、教育の現代化が進められました。こうした教育の現代化に関して、最も重要なものの一つが、1959年全米科学アカデミーによるウッズホール会議であり、議長を務めたブルーナーが議事録を取りまとめた『教育の過程』は、その後の改革に大きな影響を与えました。

ブルーナーは「どの教科でも,知的な性格を変えることなく,どの発達段階の子どもたちにも効果的に教えることができる」と主張し、「知識を構造としてとらえ、これを”らせん型カリキュラム”で学習し,科学的な概念や法則を学習者が自ら発見していく方法」について述べましたが、この方法は発見学習と呼ばれ、今日でも目にされる方は多いと思います。

また、この著書の中では、”レディネス”や”構造”について多くのページが割かれ、今日の医学教育への影響の深さを見て取ることができます。

 

一方、1980年代になって、ブルームは、1950-1960年代にキャロルが提唱した「学習の能力差は時間差による」(キャロルの時間モデル)を発展させました。ブルームは、全ての学習者が教授される内容を完全に習得することができる(完全習得学習)とし,形成評価を重要視しつつ、この観点に基づいて教育目標を階層的・段階的に分類(ブルームの目標分類学(タキソノミー:Taxonomy))しました。このTaxonomyの概念は、今日の本邦における医学教育改革の基盤の一つとなっています。

 

YT

Oct 2, 2017


インストラクショナルデザインの理論とモデル

CM ライゲルース / AA カー=シェルマン編

鈴木克明 / 林雄介 監訳

 

インストラクショナルデザイン(ID)という用語は聞いていたのですが、何となく触れることに億劫であった私が初めて手に取った一冊です。内容を読むと、全く新規な理論ではなく、多くの点で既に導入されていることが分かり、驚きました。

 

ライゲルース先生によれば、IDとは”目的をもって学習を促進させるために行うことすべてである”とのことです。また、Instructional design theory (ID理論)は、事象、分析、計画、構築、実施、評価で構成されています。

こうしたID理論の取り扱う理論は古いものも含まれ、1966のブルーナーのみならず、大御所であるデューイの経験主義的アプローチにも光を当て論述しています。こうした点から、私にはIDの目的とするところは、”学習の促進”という観点から、既にある指導方法(教授方法)や新しい指導方法を統合・整理することのように見えました。

興味深い点は、あまりはっきり書かれていませんが、構造主義的な概念の影響が見て取れることです。実際に、教育心理学的な意味での構成主義の概念は明示されており、こうした、一方通行ではなく構造や構成を認識し、対等な関係の中で”学びの場”を形成するという姿勢は、今の医学教育にも十分認められますね。

 

哲学や教育的心理学的な、あるいは、行動科学的なバックグランドを要求されますが、医学教育を学ぶ上で、面白い本だと思いました。

 

YT

Dec5, 2016


HUMOR IN MEDICINE

Felson B, 1989; RHA Inc., Cincinnati. Ohio.

(フェルソン 読める胸部X線写真、堀真一ら、診断と治療社にも掲載)

私が研修医時代に励まされた言葉です。

昨日、学生さんと話をしていて、久しぶりに思い出しました。

何事も初心忘れるるべからず、ということで、引用します。

YT

Sep28, 2016

終生、医学を勉強する人のためのフェルソン10箇条

第1条 好きなことなら勉強も楽しい。好きになるよう努力すべし。

第2条 法則は事実と同じくらい大切である。法則を習得して初めて事実をまとめ上げることが出来る。

第3条 目的がはっきりしていれば効率的に勉強できる。ユダヤの法典「タルムード」には以下のようにある:『自分がどこへ行こうとしているのかわからない時、すべての道を歩けばいずれ目的地に辿り着けよう。だが、もし目的地がわかっていれば、ずっと早くそこへ到達できる』

第4条 自分が経験した症例をフォローすべし。小生は症例をフォローアップすることで他のいかなる方法よりもよく学び、よく記憶した。それはハードなことではあるが、孔子(それともKnute Rockneだったか?)曰く、『最もよく働く者が最もよく学ぶ』のだ。

第5条 能動的にやれば、より効果的に勉強できる。何かを読んだら、その著者に質問すべし。懐疑的になれ。盲目的に権威に従ってはいけない。

第6条 勉強に復習はつきものだ。ただし、単純な繰り返しだけの復習では意味がない。学んだ時とは別の方法を使いなさい。症例を見て、よく調べ、文献を漁って、症例を探し出し、質問すべし。

第7条 勉強にはご褒美が大切だ。自分の得た知識を披露し、ほんのちょっぴり自慢しなさい。講義中は堂々と発言すべし。妻や夫や恋人にはもちろん、同僚にもどんどん話すことだ。友達に話すのに躊躇するな。

第8条 人にはそれぞれ最適な勉強方法がある。自分に一番適した方法を確立すべし。過度に教師に頼るな。優れた生徒が少ないのと同様、優れた教師もそんなにいない。

第9条 習得した知識を素早く呼び戻す技を身につけるべし。パソコンを使うのもいいが、他にもよい方法がいろいろあるはずだ。自分なりの方法を開発して、それを常にブラッシュアップしよう。リコールシステムがなければ、君は負けだ。

第10条 勉強時間をゴールデン・アワー、仕事時間、眠い時間に分割すべし。バイオリズムは人によってさまざまだから、自分に最適なスケジュールを立てるべきである。ゴールデン・アワーにテレビを見たり、眠い時間に医学書を読んではいけない。

 

 


大学教育について

J.S. ミル著、竹内一誠訳、岩波文庫

功利主義のベンサムの擁護者であるミルが、セント・アンドルーズ大学名誉学長就任時の講演(1867年2月1日)で、大学教育、とくに内面教育としての一般教養教育の重要性に述べたものです。ミル自体は、自由主義・社会民主主義の形成に大きな役割を果たしていますが、ここではそうした経済学者としての側面にはふれません。本書では、教育者、政治哲学、論理学的な観点からの記述が示唆に富み、現代にも通用すると思います。

YT

Sep8, 2016

 

「学生が知識や技術を賢明に良心的に用いるかは、どのような方法で教わったかではなく、どのような精神がその技術に吹き込まれたかが重要」である。「人間は、医師などの職業人である前に、人間である」ことを理解することが大切で、「賢明な人間に育てれば、賢明な職業人に自然となるであろう」

 

"Whether those whose specialty they are, will learn them as a branch of intelligence or as a mere trade, and whether, having learnt them, they will make a wise and conscientious use of them or the reverse, depends less on the manner in which they are taught their profession, than upon what sort of minds they bring to it what kind of intelligence, and of conscience, the general system of education has developed in them. Men are men before they are lawyers, or physicians, or merchants, or manufacturers; and if you make them capable and sensible men, they will make themselves capable and sensible lawyers or physicians. "